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たまたまなのだろうけど、今回の LAでのショウ(12月2日、3日)はなんだか因縁めいてて、見にいくのならば絶対にココだなって思ってた。というのも、The Smashing Pumpkinsが彼等の地元/シカゴのクラブMetroでファイナルショウを行ったのが2000年12月2日だったのと、今回のショウの会場Gibson Amphitheatre(当時のUniversal Amphitheater)は、2000年5月23日にBilly Corganがバンドの解散をラジオで発表したその夜のショウの会場だったから。まぁ、ほんとに偶然なんだろうけど。
前座はなくほぼ定刻通りに客電が落ち、Jimmyのドラムソロからはじまる 'Roctopus' という曲でショウがスタート。オーディエンスの視線はJimmyに釘付け。気づいたら他のメンバーもステージに揃ってた。今回のツアーではBilly、Jimmy、Jeff、Ginger、Lisaのバンドの5人に加え、トランペット、トロンボーンの管楽器奏者2人と、キーボードとフルートを担当したクリストファー・ブーリー氏(ジンジャーの夫)、ヴァイオリニストの女性を加えた総勢9人がステージに立っている。沢山の歓声があがる中、ゴールドの衣装(自由の女神のような金のかぶり物と金のドレス)を身に着けたBillyがステージに登場。
この衣装は私の目から見るとちょっと紅白歌合戦の小林幸子を思い出させちゃってロックとは無縁な感じの印象なのだが、Billyはいたって真面目な表情でステージ上をゆっくり歩き回り、「光の使者」がやってきて、なにかの儀式をやってるかのように振る舞っていた。で、the Searchersのカヴァー曲 'Everybody Come Clap Your Hands'というすごくポップな曲を披露。曲と衣装のせいでこちらがあっけにとられているうちに、スタッフが出てきてこの金の衣装を脱がせると、ZEROの白シャツ×白スカート姿に変身したBillyが一息つかずに 'Tarantula' プレイした。
この'Tarantula'、その後の 'G.L.O.W.' 、'Siva' の流れは秀逸で、ヘビーでグルービーでサイケデリックでとにかく早くも1つめのピークがやって来て、会場も大盛り上がり。動から静へ、そしてまた動へ。何かに取り憑かれたようなBillyのギタープレイがよく見えて、うーんやっぱりかっこいいなんてしみじみと思ってしまった。
続いて 'Eye'。Jeffと顔を見合わせながら呼吸を合わせて曲を弾き始めたのが印象的だった。次に、日本でもアメリカでも大人気な 'Mayonaise' がプレイされ、この曲でも会場は大盛り上がり。Billyがちょっと咳き込んでいたので、やっぱり少し喉の調子が悪いのかなと思ったんだけれど、彼はちょこっと水を飲むとすぐに次の 'Tonight, Tonight' をプレイ。いつもと趣向が変わってイントロやリフの所にトラッペットの音が加わり、より壮大でロマンを感じさせる楽曲に仕上がっていた。そしてそのままギターのエフェクトがとっても気持ちいい 'Speed Kills'へ 。Billyのソロパートがとてもすばらしくて、ついつい見入ってしまった。曲が終わるとBillyが「楽しんでる?」とここで初めてMCを入れた。
一息入れてプレイされた'Stand Inside Your Love'はやっぱりBillyの喉の調子が悪そうだったけれど、Gingerのコーラスも加わって世界観バリバリ。で、Jimmyのたたくドラの音で始まったのが 'Superchrist' 。この曲はヴォーカルパートが少ない分、ほんとにバンドの醍醐味を味わえる曲で、Pumpkinsらしい歪んだギターサウンドやヘヴィーなドラムをじっくりと楽しめる。ここ数年のJimmyはプレーヤーとして1段も2段も高い所へ上がったというか、とにかくドラムプレイへの絶対的な自信が見えて、かつ気負う所がなく非常にすばらしいなと思った。Billyが小さくジャンプして、Superchristから続けて披露された 'United States' でもメンバー個々のプレイが冴えまくっていて実にすばらしく、間奏ではBillyがジミー・ペイジよろしくアメリカ国歌を気持ち良さそうにプレイ。恒例のファンの合の手も入って非常によい高揚感だった。
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やっとここでバンドが一息つくと、Billyは「Thank you very much, Thank you」「Really Thank you」とありがとうの言葉を何回も繰り返し、ちょっと雑談。LAはJeffやGingerの地元だということもあってJeffへ質問しながらの地元談議や「サミー・ヘイガーのソロのカヴァーでもやろうか?」とか、ちょっとリラックスした様子を見せていた。で、ファンに「今はお座りタイム。みんな年寄りだから座っていいよ」とコメント。確かに自分を含め、周りを見渡すと年齢層は高めだったかもw。おかげで会場は沸いていた。で「98年のアルバム・アドアから、僕の母・マーサについて書いた曲をやります」といって、アコースティックギターとキーボードとトランペットの優しくて美しいサウンドで創り上げられた 'Once Upon a Time' が披露された。私はこの曲がとても好きなので、結成20周年記念ツアーのセットリストにこの曲が加えられているのをほんとにうれしく思った。続いてもアコギのセットでThe Cruxのカヴァーの 'Again, Again, Again' という曲を披露。管楽器のサウンドと上手くマッチしていて素敵に仕上がっていた。曲が終わるとBillyはステージの端からメンバー紹介。で、「椅子の座り心地はどう?」みたいなことを言った後に「それじゃあ、Rose Marchっていう曲をやります」といって、2008年の夏にリリースされたEP/アメリカン・ゴシックから 'The Rose March' をプレイした。ラララ〜っていう所が女性陣のコーラスになって効いてて、オリジナル音源とはまた違った印象で良かった。
アコギから再びエレキのセットに変わり、Billyが「オーディエンスの活力源」と言ってニヤっとしながらプレイしはじめたのが 'Today'。イントロが流れたとたんに、会場の空気がガラッと変わり、実際に座っていたオーディエンスも立ち上がった。BillyはTodayの最初の何小節かをすべてオーディエンスに歌わせて(もちろん場内大合唱!)あの印象的なリフをとてもクリアに響かせていた。Billyの「ニヤッと」はこの後に続いてプレイされた 'Bullet with Butterfly Wings' と合わせてファンが喜ぶ曲だと解っていたからだと思うけど、私はこれを見て「今回のツアーは選曲についていろいろ言われてるけど、結構サービスしてくれてるじゃん」なんて思ってしまった。大体、Billyって相当な曲者だし、彼の考えてる構想が一般的な再結成バンドのそれとは違うのは当たり前だと思うから。で、Billyがギターをおろして 'The Beginning Is the End Is the Beginning'。映画『Watchmen』のトレイラーで使用された事で再び脚光を浴びた曲だから、これもファンサービスの1曲かな。この3曲はあまりアレンジを変えず原曲に近いアレンジでプレイしてたしね。
で、ここから再びヘヴィーなセットへ。まずは 'Heavy Metal Machine' 。これは結構アレンジが変わっていて、よりヘビーでメタルチックなギターサウンドが加えられていた。Billyは導入部分でthe Whoのピート・タウンゼントのようにマイクをぐるぐる振り回したりと気合いが入ってる様子。さらに曲の後半ではイングヴェイ・マルムスティーンよろしく高速ギター・ソロも披露。この流れで楽曲は 'Glass' Theme' へと自然につながり、ギタリスト・Billy Corganを存分に堪能できるセットになっていた。
本編のラストはPink Floydのカヴァー曲 'Set the Controls for the Heart of the Sun' 。フィードバックを利かせた幻想的なギタープレイと合わせ、曲の終盤ではBillyがいろいろなことをやっていのだが、ティンパニーをたたいてみたり、鳥の鳴き声のような音の出る笛を吹いたり(1つ目の笛がうまくならなかったので、一旦ステージに投げ捨てたのだが、そのあとまた拾って客席に向かって投げ込んでいた)とかなり前衛的な演奏でステージは終了した。
アンコールはとても和やかな雰囲気で、'We Only Come Out at Night' と カーペンターズのカヴァー曲、'Close to You' を披露。これらの楽曲はステージに揃ったメンバーがマウスピースタイプの笛で可愛くハミングしての演奏で、とてもアットホームな印象に。'Close to You' を演奏しながらボーダーシャツに着替えたBillyが「僕たちはみんなを感じることが出来る」と、ちょっと素敵なことを言った後、「みんなを臭うことが出来る」なんてジョーク?を言いながらJimmyに話を振ったりしていた。最後にBillyは「おやすみ、ほんとに来てくれてありがとう。また明日」と言った後、タップダンス風なことをやってステージを去っていった。
いろいろと良くない前評判を目にしていたのでどんな感じだろうと心配していたが、実際にショウを体感してみて、メンバーにやる気がないのではなく、むしろ非常にすばらしいステージをしているのがわかってうれしかった。批評家にいろいろ言われている部分はわからないでもないが、個人的にはかなり充実したすばらしいステージだと思った。明日のショウも楽しみだ。 |
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