●December 02, 2000/シカゴ

目がさめると外はまだ暗かった。7時だと思って起きたのに実施はまだ6時だったようだ。どうして時計が1時間進んでいたのかささっぱり理由がわからないけれど、また眠る気にもなれなかったのでそのまま身支度を始めた。JIROさんがメトロのHPを調べてくれて、今日は客をお昼から並ばせることが判明。ゆっくり朝食をとり、とりあえず1度メトロに行ってみることにする。
メトロはシカゴの中心街からみるとだいぶ北の方にあり、自分達の泊まっていたホテルからはタクシーで20分くらいの所だった。メトロの近くまで来るとすでに人が並んでいるのが見える。毛布にくるまっている人もいて夕べから並んでいたのでろうか?と苦笑い。タクシーを降り、これまでは写真でしか見たことのなかった看板を見上げると「THE SMASHING PUMPKINS SOLD OUT」の文字が見えた。言葉が出なかった。メトロの入り口に向かって歩いていくと、いいようのない感覚で落ち着かなくて、せっかく持ってきたカメラを落としてしまう。(見事にオシャカに)それでこうやって旅行記を書いているものの、載せられる写真がないのだ。けれども、その時の空気の冷たさとか空の青さとか、それはしっかりと自分の記憶の中に残っていて、色褪せていない。
みんな思う存分写真を撮りおえたのでとりあえずメトロの向側にあるファーストフード(?)で休憩をとることにする。ZERO-TやらマシーナTやらを着たパンプキンヘッズ達がしょっちゅう店の中に入って来る。外で並んでいる彼等はこの店にトイレを借りに来ていているのだった。店員さんも慣れたものらしく「チケットはあるの?」なんて気さくに聞いてくる。私達も「メンバーがここに座って反省会をしたかもしれない」などと言って和んだ。

それにしてもよい天気。ショウが始まるまではまだ時間があるし、宴会隊長がせっかくシカゴに来たのだから、世界で2番目に高い「シアーズ・タワー」に行こうと提案してくれた。タクシーで高層ビルの立ち並ぶエリアに移動。中に入ると10分位、シカゴの歴史みたいな映像を見せられる。もちろん英語だけれど比較的わかりやすくて、短い間に沢山シカゴ観光をしたような気持ちになり、得した気分だった。(2日前にPumpkinsのショウが行われたユナイテッド・センターも映った。)展望台は103階にあって「人が高いところに登りたがるのは仕方がないことなんだなねぇ」と言って列に並ぶ。それにしても素晴らしい見晴し。シカゴが観光地でないからかもしれないけれど、そこから見える景色は浮かれたものでなく、独特の雰囲気を持っていた。ビリーはここで育ったんだな。ミシガン湖は水平線が見えるくらい広い、海みたいだよ。
ぐるりと景色を眺めていると、自分達の泊まっているホテルがここからそう遠くないことがわかり、歩いてホテルに戻ることにする。やっぱり外は寒い。少し歩くとCD屋さんがあったので暖を採るついでにちょこっと入ってみる。シカゴはブルースの街としても知られていて、街の歴史と音楽が切り離せないところだ。普通のCDショップでもブルースのコーナーが広くて、なんか渋めで落ち着いている。PumpkinsのCDで珍しいものがないか探したけど、特には見当たらなかった。(特別にコーナとかも設けられてなかった。今日解散だと言うのにさみしいな。)店の出口にはメトロの派手なカラーのフライヤーが置いてあった。文字だけだけれど、今日の公演のお知らせが書かれている。もちろん貰って帰る。
ホテルに戻った自分達はしばし休息。ショウに備え身支度を整え、食事をとり、再びメトロへ出かけることに。私は緊張のあまり食事がほとんどのどを通らず、ウェイターに「ダイエット中?」と笑われてしまった。サンノーさんは景気付けに1杯。みんな不思議な緊張感につつまれていた。

メトロに到着すると、その一角をぐるりと人が取り巻いている。メトロは日本のいわゆるライヴハウスと違い、外観が非常にクラシカルで、ライトアップされたその姿は一段と美しかった。とりあえず列に並ぶ。みんなとても気さくで「日本から来たの?日本は美しい国ね。」なんて声を掛けてくれる。そうそう、私が当日着ていたコート、「とってもキュートね!」と何人かのPumpkinヘッズ達に誉められた。「ありがとう」とコートを引っ張ってポーズをとると凄くニコニコしてくれた。こんな風に偏見がなく日本人に気さくなのはThe Smashing Pumpkinsというバンドにジェイムス・イハがいるからかもしれない。ビリーとジミーが核になってて、そこに日系人のギタリストと女性のベーシストがいる。こういう奇妙な組み合わせがより彼等を魅力的に見せてくれていたのだと思う。ほんと、アメリカの白人のバンドに黒人リスナーがいるって凄いことだよね。
入り口でのボディチェックは結構厳しくて、身体をよく調べられた。もちろん荷物も調べられる。係りの女性がアルバムの包みをみて「これは何?」というので「これはプレゼントです」と答えると「OK!」といって通してくれた。女性の人数の方が圧倒的に少ないのでそのままそこで大ボス達が来るのを待った。みんなが揃ったところで、Pumpkinsのスタッフであり、ビリーの古くからの友人でもあるタミーさんに運よく逢うことが出来た。今日は直接メンバーに逢うことができないのではないかと思い、日本からのアルバムを届けてもらうことにする。「これはプレゼントです、渡していただけますか?よろしくおねがいします。」と手渡すと『誰に渡せばいい?』と確認してくれたので「ビリーに」と答えると、彼は頷いて「ショウを楽しんできてね」と言って去っていった。

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ショウが終わって、古い造りのメトロの階段を降りたところで、偶然にもビリーのマネージャーのメリッサさんに逢うことが出来た。彼女は「素敵なアルバムを持ってきてくれたのね。」といって握手をしてくれた。アルバムは無事にメンバーの手許に渡ったようだ。彼等にゆっくり見てもらえたら本当にうれしいと思う。